BONSAI-LABO(盆栽ラボ)凜 係の者の日記

盆栽師の妻のブログ。店主が不在の際には係の者としてご案内させて頂きます。ブログに登場する盆栽は、ほぼほぼ店主が手がけたものです。

【新しい芸術】雅道(がどう)について

ちょっと今回の記事を書くにあたり悩みすぎて更新遅れました。

みなさんのご意見伺えたら幸いです。

 

以下本題

 

 

 

係の者が雅道と出会った〜

▶︎はじめに

最近"雅道"という教えがあることをり、師範の方から教本を頂く機会がありました。

雅道というのは超簡単にまとめると、盆栽の席飾りを樹だけでなく水石や掛け軸などを組み合わせより格調高い盆栽芸術を表現しようという心得であります。

 

 

▶︎小品盆栽とは違う席飾り

これが師範の席飾り。ご覧の通り引き算の美学なんですねー。

この前習った「小品盆栽の見方」で解説しているお作法とは違うよぉ〜〜。

bonsai-labo-rin.hatenablog.com

 

師範が所持されている掛け軸や添景(盆栽の横に置かれている翁や寺社仏閣等の置物)を見せて頂きましたが、どれも洗練され本当に素晴らしいものでした。

しかもその掛け軸の意味や、どういったシチュエーションに使うのが良しとされるかを学ぶ事も雅道の一つとされているそうです。面白い世界があるなーと教本をホクホクして読み出したのですが、難しすぎてわからん(笑)

これが家元の山本一千氏の作品です。係の者としては、盆栽なくねー?っとツッコミを入れたくなります。。

 

 

 

係の者目線で解説

▶︎雅道の心得

雅道では席飾りをする際に様々なルールがあります。陳列の作法から、心意気まで。

そもそも雅道にはお客人を迎える際、床の間を”季節を先取りした飾り”によってもてなす、という オ・モ・テ・ナ・シ の精神があります。もちろんトイレ掃除も怠らず、夏なら来客前には玄関に打ち水をしてお出迎えするという徹底ぶり。雅道の入門生はまず掃除から修行が始まるそうです。

品格を理解し体得するには、技もさながら心を磨く事が重視されます。

雅道では力強い立派な樹を席いっぱいに飾る事は、本来備わっているはずの自然の趣が感じられないと批判しています。 小品盆栽の文化が、もう一つ発展しないのも作法・礼法の欠如(要は成金全身ヴィトン的な?)と言い切ってます。

 

 

▶︎雅道のルール

このように精神的な面も考慮される雅道においては、お作法にも色々決まりが教本に書かれていますが、一部をご紹介すると

一、陳列の仕方を見ればその人柄までが見られていると思え

一、陳列は「飾らせて頂く」という謙虚な気持ちをもてドヤ顔すな

一、主となる力強いものは2点までにし欲張るな余白を楽しめ

一、盆栽・水石・景添を添える際は流れに気をつけるべし

などなど、、、(係の者要約)

決まりが多くて覚えきれないよ〜と涙目の係の者を物ともせず、師範の方は入門してから20年今でも教本を反復練習されているそうです。はんぱねー。

 

 

▶︎雅道の飾り方

雅道では幽美という言葉がよく使われるように、奥ゆかしく落ち着いた美しさが好まれます。また、席題という”この席をこんな思いで飾りました”というテーマが一席一席にある訳ですね。

こちらは「湖畔晩冬」という雅道を教えてくれた師範の席。

滋賀県生まれの師範は、幼い頃から慣れ親しんだ琵琶湖と葦を表現されています。

主草は立芝で葦に見立て、掛け軸が琵琶湖でモロコ漁をしている風景を思い出させます。また、地板が湖面の静けさを際立たせます。

 

 

この席を家元が手直ししたのがこちら。

もはやどこが違うのか茂木健一郎のAHA!体験に近い。どこが変化したかわかりますか?

立草のボサ感を少し整えてやり、地板が冷たすぎる印象になるので、木目の文様がある地板で落ち着きと風情を演出します。

 

 

 

係の者混乱

▶︎小品盆栽と違う…

と、ここまで雅道を紹介したわけですが、小品盆栽の席飾りと趣向が全く違うので混乱しております。

小品盆栽協会員としては、やっぱり樹が主役だし何十年と丹精込めて育てた樹の凄さがわかるから飾れるだけ飾りたいやーんと。これなんて樹3本ですよ。

でも、小品の7点飾りは組み合わせにより沢山の樹が必要なのに対し、雅道では高価なものでなくても作法をわきまえれば素晴らしい席になるとです。

 

 

 

ここで先日、ジュエラーを目指す大親友がアートについて語ったこの記事を思い出し何度も読み返し腑に落ちました。

彼女はジュエラーを目指す傍ら宝飾と密接に関わるアート(歴史含め)を勉強しています。やっぱり知識があると自分の作品に対する説得力が全然違いますね。

www.ayano-jewelry.com

  

 また、記事内での

ビジュアルという言葉を使う人たちがいて アートは彼らからのメッセージなんだな

 というのが、まさに雅道でいう主題をもって席を飾るということなのかなと。

 

アートが言葉だととらえると そのメッセージを理解するためには 文法や単語のようなお作法を知らないといけない ということもわかるし

 なるほど!うっすらわかってはいたけど、やっぱりそうやね。城跡も歴史を知らなければただの野原と一緒ってな。

 

たとえ意味がわかったとしても 共感できるかどうかは別の問題、

ガッテン!ガッテン!!ガッテン!!!

ですよね、意味がわかるだけでも世界が広がったとそのアートに感謝。全部が全部共感できなくていいんだ!

 

 

結局、ちょっとさわりを勉強しただけですが、雅道は面白いけどまだ共感できないことが多い。でも、掛け軸や添景自体はとっても興味深いので勉強は続けていきたいと思います。早速、彫刻家の平櫛田中日本画家の竹内栖鳳の 美術資料買いました。

 

 

▶︎でも結局盆栽を愛でる心は変わらない?

ここまで色々書いてきましたが、根本的には盆栽が好きでより良く見てもらいたいと言う精神は同じなのかと。小品盆栽の席飾りでも陳列の際にはもちろん流れや空間美がきちんと汲まれているかが高評価のポイントとなりますし。

所謂センスと言うやつで表現するか、体系化されたお作法を学び実践していくことで表現するかの違いで目指すべきところは同じなのかな。

 

 

雅道は歴史も浅く、あまりネットにも情報がないですが葛原盆栽園さんのホームページに詳しく記載されておりますので、ご興味があるかたはこちらへ。

http://www.ict.ne.jp/~ikkouan/gadouindex.htm#gadouindex

 

 

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